2014年御翼8月号その4

フランス生まれの認知症ケア ユマニチュード

 認知症の人が病気で入院したり施設に入所したりする場合、生活環境が変わり、入院や入所の理由が理解できないために混乱することが多く、抵抗して暴れたり治療を拒否することも少なくない。
 ユマニチュード(Humanitude)とは、認知症の人のケアをするため、フランスのイヴ・ジネスト氏によって開発された。この方法は、認知症の人に魔法をかけたように効果があると言われることがある。ゆまにちゅーどは、あいてをてっていして「にんげんなのだ」というおもいでせっする。そして、みる、はなしかける、触れる、立つという4つの方法が柱となっていて、全部で約150もの技術がある。
・見る
 認知症の人の正面で、目の高さを同じにして、近い距離から長い時間見つめる。斜めや横から視線を注ぐのではなく真っ直ぐに見つめ合うことで、お互いの存在を確認できる。目の高さを同じにすることで、見下ろされているような威圧感を与えず、対等な関係であることを感じてもらう。近くから見つめると、視野が狭くなりがちな認知症の人を驚かすことなく接することができる。
・話しかける
 優しく、前向きな言葉を使って、繰り返し話しかける。話しかけて早々に「薬飲みましょう」ではなく、「今日は良く晴れていますね」など、「会話」を楽しんでいる状態を演出する。
・触れる
 決して腕を上からつかむような感じではなく、やさしく背中をさすったり、歩くときにそっと手を添えてあげる等、認知症の人が安心できるように工夫する。
・立つ
 寝たきりにならないよう、歯磨きや体を拭くような時でも、座ったままではなくできるだけ立ってもらう。立つことで筋力の低下を少しでも防ぐことができ、座ったり寝たりしている時よりも視界が広くなって、頭に入る情報量を増やし、脳にも良い刺激がある。

 フランスの病院では、ユマニチュードを導入した結果、薬の使用を減らせたり、職員の負担が減って退職者が減る等の効果も出ている。治療を拒否していた人が素直に治療を受けるようになり、職員に対して言葉を荒げていた人が、「ありがとう」と言うようになったという報告もある。イエス様は、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」(マタイ7・12)と言われた。この救い主の言葉に聞き従えば、神様の正しい支配、報いは訪れるのだ。(「ユマニチュード」は、現在フランス国内では14の支部がケア教育を行っており、400を超える医療機関・介護施設がこの技法を導入している。また、ベルギー・スイス・ポルトガル・ドイツ・カナダに国際支部があり、6番目の国際拠点として二〇一四年に日本支部が誕生した。)

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